カタナガレ・ノイエ
北海道江別市に建つ住宅である。敷地は昔、クライアントのご両親が住まわれていた場所で、当時の庭木がそのまま残っていた。新しい住宅は、残された木々を切らないよう、かつ、それらの木々を楽しめるよう配置された。その結果、建物の背後に堆雪スペースが確保できることから(敷地面積の関係から、札幌などでは建物周囲に堆雪スペースを確保することが困難である。)、我々は寒冷地の屋根周りに起こりがちな諸問題を回避すべく落雪形態の建物を提案することとした。
屋根形状によって必然的に得られる天井高さを利用して、2階建てではあるが3つのフロアレベルを持つ断面とし、それぞれのレベルにある空間が緩やかに繋がっていることで、1階床から輻射される暖気が建物全体へと広がり、外側断熱と相まって暖房設備を最小限に抑えている。こうした断面形状によって「室温としてのあたたかさ」だけでなく、互いに家族の気配を感じ取れる「家族というあたたかさ」も獲得できる。
撮影:酒井広司 Photo: Koji Sakai