サザエサン・ノイエ

30歳代のご夫婦と就学前のお嬢さんという3人家族のクライアントは、新築を機にご主人のお母様、お婆様、共に20代の弟さん、妹さんと同居することにした。最近では珍しい4世代7人家族の誕生である。こうした家族構成と若いクライアントのライフスタイルを重ね合わせる時、7人家族相互の関係性や距離感というのは、住宅のそれというよりもむしろ下宿や寮に近いのではないかと考えた。

この住宅の中心には、異なるレベルで十字形に交差する2つのパッサージュが用意され、そこに5つの小さな個室と水廻りなどの機能部が面している。限られた面積の中でパッサージュ(共用部)のボリュームを出来るだけ大きくとり、個室よりむしろ『共用部』に家族それぞれが居場所を見つけ、7人が無理なく緩やかに繋がっていられる住宅を目指した。
光の反射を意識し屈折するパッサージュ、住宅の中心に位置する螺旋階段、吹き抜けの端部に位置する大きな断熱窓…それらはすべて、家族それぞれが自分の居場所を発見する手掛かりとして機能する。
個室に設けられた室内窓からは、各人の気配がいつもパッサージュに染み出ている。

撮影:酒井広司  Photo: Koji Sakai