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JR岩見沢駅舎デザインコンペ応募案
その昔、この駅から街が始まり拡がっていったように、新しい駅舎も「新しい岩見沢の出発点」となるはずです。しかしそれはかつての駅のように「駅舎」としてのみ機能し、街が変わっていくのを見守る「受動的駅」ではなく、積極的にこの街に関わり、岩見沢を活気付けていこうとする「能動的駅」であるべきだと私たちは考えます。文化や情報が「通過する駅」ではなく、街を内包し文化・情報を「発信する駅」、それが私たちの提案する新しい岩見沢駅です。
駅前に見られるアーケード下の商店群や裏路地は、岩見沢市民にとって親しみのある人にやさしいスケール感を持っています。私たちは、駅舎に求められた機能とヴォリュームを、このスケール感をイメージしながら分節し、外部を挟み込むように配列しました。こうしてできる大小の隙間スペースは、採光機能のみならず屋根付の屋外広場や路地のような市民ギャラリー、上下階の気配を繋ぐ複数の吹き抜けなどになって賑わいを発生させ、駅舎内外に活気ある小さな街の雰囲気を作り出します。『市民が使える場所』―センターホールや路地ギャラリー、いくつもの個性的な店舗群などが、市民のアイデアによる様々なアクティビティーを可能にし、それら駅舎内で起きたアクションがやがて駅周辺に波及していきます。
建物立面では、この隙間スペースが南北を繋ぐスリットの役割をし、街からは列車の出入りを、ホームからは街の様子を見ることができ、駅は「動き」と「奥行き」という表情を獲得します。また、中央の屋根付広場は駅前広場と一体化し、真夏の強日射や冬季の降雪時にも屋外での活動を可能にしますし、アーケードをイメージした連続した低い庇は、降雪時に駅の東西にある施設に向かう為の雁木として有効です。新しい施設は長い岩見沢の冬においても「能動的駅」として機能するのです。
撮影:酒井広司 Photo: Koji Sakai