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フレミング・ノイエ
札幌市中心部より車で20分ほどの、藻岩山中腹に建つ住宅。建物の2階レベルからは、都心部はもちろん石狩湾、暑寒別岳、夕張山地、野幌原生林までパノラミックな風景を一望することが可能である。しかし、ここでは椅子に座ったまま安易にその風景全てを見ることができる場をつくるのではなく、『海を見たければ海に行き、山を見たければ山に行く』という外部での行動を建物内に取り込み、小さな家の中を移動することによって場面が開けていく「風景の鮮度が落ちない住宅」をつくろうと考えた。
遠望が可能な2階レベルでは海(石狩湾)、山(藻岩山)、そして原野(野幌原生林)への3つの強い方向性を持たせ、外部との多様な関係を結ぼうと考えた。一方、外部への眺望が期待できない1階レベルでは、平面と釣合わない天井高や、筋違いを利用した三角形の壁、いくつかの小さな開口などが見る場所によって様々に重なり合い、内部に向けた多くの場面をつくりだす。
こうして導き出された建物のファサードは、見る角度によってボリュームの印象が異なるものとなり、周辺の緑の背景に成るべく選択された赤錆色の外壁と相まって、個性的住宅が多いこの地域においても独自の存在感を獲得している。
撮影:酒井広司 Photo: Koji Sakai